リンド
行くな……っ。
主人公
きゃっ!?
リンド
行くな……行かないでくれ。
……このまま、傍にいてくれ……。
主人公
で、でも、こんなに震えてるのに……。
主人公
(じっとしてるだけじゃ
回復なんてしないんじゃ……)
リンド
俺が……怖いか?
主人公
えっ?
リンド
お前の力じゃ、俺の腕からは
逃れられない……。
今ここで本能に呑み込まれたら――
リンド
俺は、この首筋に牙を立ててしまう……。
主人公
…………!
リンド
逃げたいって思うか?
今の、俺から……。
主人公
……それは――
主人公
(腕の力が強くなって……っ)
主人公
兄さん、さすがに苦しいよ……。
リンド
駄目だ。……行かせない。
こうして、抱きしめさせてくれ……。
主人公
(っ……兄さんの髪が、頬に触れてる)
リンド
お前に触れてると……渇きを感じる。
たまらなく、喉が渇いて……欲しくなる。
主人公
…………!
リンド
なのに、満たされるんだ……。
ひどく落ち着く……。
耳にかかる熱い息を意識してしまって、
心臓が痛いくらいに高鳴る。
硬直する体に回された兄さんの腕は、
すがりつくように力を緩めない。
主人公
(振りほどけない……体が動かない。
血を吸われてしまうのが怖いから?)
主人公
(ううん、そうじゃない。
兄さんが別人みたいだからだ……)
リンド
ごめんな……震えてる。
怖がらせてるよな……。
リンド
けど、お前を襲ったりしないから……。
しばらく、こうさせてくれ……。
主人公
(兄さん……)
意識したとたん、兄さんの
熱い吐息も回された腕も、すべてに
息が詰まりそうになる。
主人公
(こんなの変だよ……私、
どうしちゃったの……?)
リンド
…………。
リンド
…………悪い。
主人公
え……。
リンド
どうかしてた……すまない。
主人公
も、もう、大丈夫……?
リンド
……ああ。ちょっと、寝るよ。
看病してくれて、ありがとうな。