螢:
将軍の妹姫が正妻として嫁ぐっつーのに、
ずいぶんと地味な花嫁行列だな。
実彰:
昨年のうちに、奢侈禁止令が出ている。
冷害の影響でな。そのせいだろう。
実彰:
幕府も、民の目を気にしているのだ。
それでなくても、この花嫁行列は
人目を引くことになる。
螢:
なるほどねェ……。
いちお、考えてんだな。
鈴懸:
しゃ……しゃし? きんしれい?
それって、なに?
左京:
皆さん、静かにしてください。
もう、私たちの仕事は始まっています。
鈴懸:
え、あ、はあい。ごめんなさい。
香夜:
…………。
馬の横や後ろで、会話が飛び交っている。
ただ、それに意識を向けて聞き取るような
余裕はどこにもなかった。
香夜:
(う、馬って結構高い)
香夜:
(少し、怖いな。
落ちないように、しっかり
つかまっておかないと)
とはいえ、手綱を握りしめただけでは
あまりにも心許なかった。そんなつもりは
なかったのに、つい視線が揺れてしまう。
香夜:
(あ……)
──そのとき、護衛のお侍様たちと
視線が合った。

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