螢:
いいからまずオレの話を聞け。
香夜:
よ、よくありません!
いま、稽古中なの。後にして。
螢:
後にできねぇ。
いまでないと、オレの決心が鈍る。
稽古なんかいつでもできるだろ!
香夜:
稽古なんかって……螢にとっては私の薙刀なんてお遊びみたいなものかもしれないけど、でも——。
螢:
そんなこと言ってねぇだろ!
……じゃねぇ、クソっ。
なにをどう言えばいいんだよ……。
苛々したふうで螢が頭をかいて
独りごちた。
香夜:
(一生懸命で不器用な、私のよく知っている螢……)
とたんに懐かしさが込み上げて、
胸がぎゅっと苦しくなる。
香夜:
(大して長い間、離れていたわけでもないのに……)
そう思ってから、ふと気づいた。
香夜:
(私……寂しかったんだ)
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