それは、一瞬の出来事だった。
鈴懸の抜いた刀が、神威さんの肩を
深々と切り裂く。
神威:
うああああっ!
血しぶきが目の前であがり、
神威さんが私の髪を手放して、
一歩後ずさる。
それでも、鈴懸は引こうとはしなかった。
鈴懸:
よくも……よくも、香夜をこんな目に……っ!
鈴懸:
許さない。絶対、お前だけは許さない、神威!
鈴懸の瞳に、混じり気のない怒りが浮ぶ。
それは、私が初めて見た鈴懸の怒りだった。
神威:
ひ、ひいいっ!違う、俺は、俺は……っ!
鈴懸:
違う? 何が?
神威:
お、俺はそんなつもりじゃなかったんだ!ただ……っ!
鈴懸:
何だっていうの?香夜をこんな目に遭わせて!
鈴懸:
……同じ目に遭えば、分かるかな。香夜の、痛みが。
ふっと、鈴懸の眼差しが研ぎ澄まされた刃の
ように、鋭くなる。
そして、獲物に飛びかかる前の獣のように、
身を低くして——。

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