香夜:
九十九丸っ!?
驚いた……いつからそこにいたの?
九十九丸:
来たばかりです。
すみません、邪魔をしてしまいましたか?
香夜:
ううん、それはいいけど……。
見てたなら声を掛けてくれれば良かったのに。
九十九丸:
最初はそのつもりだったんだが、
つい見入ってしまった。
九十九丸:
東海道で武芸の心得があると言っていましたが、見事なものですね。
足も構えも基礎に倣って良く出来ている。
香夜:
ありがとう。本物のお侍さんに
褒めてもらえるなんて光栄だわ。
九十九丸:
お嬢さん。
良ければ、俺も隣で稽古をしていいですか?
香夜:
九十九丸も?
九十九丸:
旦那さんに今日は上がっていいと言われたので、久しぶりに刀を振ろうかと考えていたんです。
いいですか?
香夜:
もちろんいいわ。
九十九丸がどんな稽古をしているのか、
私も見てみたい。
九十九丸:
はは、あまり期待されても困りますが……。
では支度をしてきます。
九十九丸は刀を構え、真っ直ぐ前を見据える。
稽古と言えど、その表情は真剣そのもの。
私は、剣に対する九十九丸の志を
垣間見たような気がした。

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