九十九丸:
……何もないか。
困ったな、これでは暖が取れない。
香夜:
迷惑をかけてごめんね、九十九丸……。
九十九丸:
お嬢さんは悪くないよ、全部俺が——。
九十九丸:
…………。
香夜:
九十九丸……?
暗闇では周りが見えない。
だから突然、九十九丸が隣に座ったことに
驚いてしまった。
九十九丸:
身体が震えてる……寒いですか?
香夜:
うん、少し……。
風は入らないから外よりはいいけれど。
水を吸った裾がじわじわと身体を冷やしていく。
足の先にはもう、感覚があまりなかった。
九十九丸:
……お嬢さん、無礼を許してくれ。
香夜:
え……?
香夜:
九十九丸……?
九十九丸:
俺は使用人だから……
お嬢さんを守らないといけない。
九十九丸:
無礼は承知の上です。でも今は……
お嬢さんの身体を温めさせてください。

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