螢:
……おい。
頭がゆらゆらしている。
なんだか、心地良い。
香夜:
(…………?)
すぐ近くから、声が聞こえてきたのが
分かった。
これは、螢様の声だ。
そう、狼の遠吠えがどうしても気になって
しまって、少しの間でいいから何か
話をして欲しいとお願いして──。
香夜:
(あれ?)
そう、螢様の話を聞いていたはずだ。
狼のこととかを、色々。
でも、どうしてだろう。
なんだか、違和感がある。
というか……肩が、温かい。
螢:
ったく……さっきまであんなに怖がってた
くせに、立ち直り早いって言やいいのか?
いや、図太いが正解か……?
螢:
……まあ、それはいいんだけどな。
見直さなくもねぇし。
香夜:
(……?)
そもそも、なぜ視界が真っ暗なのか。
いくら行灯を消したままとはいえ、
何も見えないほどではなかったはずだ。