縁:
……やっぱり、よく似合ってる。
俺が想像していた以上だ。
加賀で織られた紬の着物は、
上品な藤鼠色の地に、鈍色のよろけ縞。
雪輪を描いた文羅の夏帯。
竜胆色の襦袢。乱菊の帯揚げ。
その身を包んでいるのは、あの五剣祭の時、
俺が選んだ着物地と帯だ。
縁:
いつかは仕立ててもらって
着付けた姿を見たいと思ってたが、
ようやく念願が叶った。
香夜:
はい……。
縁:
さすがに花嫁行列の時のような
見事な白無垢は贈れないけど、
これを代わりに、受け取ってくれるかい?
香夜:
もちろんです。
縁さんに選んでいただいた
着物ですから。大切に着ます。
微笑む香夜は、ほんのりと
その頬を染めていた。