鈴懸:
はい。熱いから気を付けてね。
香夜:
え……?
私はつい、目の前の匙と、それを持つ
鈴懸の顔をと見比べてしまった。
こうして差し出すということは、
つまりこのまま食べろという意味で……。
香夜:
そんな……。
痛むのは肩だけだし、
自分で食べられるよ。
鈴懸:
いいから。ね?
ずい、と匙を口元に近づけられる。
私は、観念して口を開いた。
香夜:
ん……。
温かなお粥を口に入れると、
ほっとする味が口の中に広がった。
香夜:
美味しい……。
鈴懸:
ふふっ、良かった。
生姜を入れておいたから、きっと
体があったまるよ。
香夜:
……この草は、なに?
鈴懸:
それは白根草。胃を休めてくれる薬草なんだ。
で、こっちは薺。
薺は、熱によく効くんだよ。
鈴懸が、入っている薬草ひとつひとつを
説明してくれるから、だんだん
楽しくなってきてしまった。