左京さんは、人差し指と中指に紐を挟むと、
両手を広げた。
左京:
ほら。これで、独楽の綱渡りです。
矢ノ彦:
わあっ。すごい!
香夜:
さすが左京さん。見事ですね……!
矢ノ彦:
お侍さんも、子供の頃は
独楽の練習をいっぱいしたの?
左京:
ええ。子供の頃は、よくこうして遊びました……。
懐かしいです。
左京:
姉上は、この技を見せると、
本当に楽しそうに笑って……。
それが嬉しくて、何度も練習しました。
左京:
父上は見世物小屋の芸人にでもなるつもりかと
顔をしかめ、母上は、そんな父上を宥めて……。
香夜:
いいご家族だったんですね……。
左京:
ええ……あの頃はとても幸せだった……。
あの頃の私はそれが当然で……
永遠に続くものと思っていました。