……ん、寒い？

 

さすがに全身ずぶぬれだもんな。

 

もともと山の夜は冷えるし。

 

僕は平気だよ。そりゃ寒いけど、

 

君みたいに、ぬるま湯の中で育ってきたわけじゃないから。

 

雨でずぶぬれの任務もあったし。

 

……裏切り者に殺されかけたあの日も、大雨だったっけ。

 

あの時と今と、どっちが酷いだろうな。

 

……どっちもどっちか。

 

なに、悲しそうな目になってるけど？　

 

そんなに僕が可愛そうなら、君の体で温めたらいいじゃないか。

 

へ？　ちょっと、待って、本気で……？

 

あ、あのさ、苦しいんだけど……。

 

もういいや、好きにしてくれ。こうしていれば。

 

君の体も温まるだろうし……僕も、体温を保てるし。

 

本当に……変な人だよな。

 

僕が考えを読めない人間なんて、君くらいだ。

……これでもまだ、何も言わないんだ。

 

あんまり強情に黙ってると、無理やり口、閉じれなくするよ？

 

君の声が聞きたいんだ。

 

ほらっ、あーん……っ。

 

ああ、噛まないほうがいいよ。

 

手錠の鎖なんて、きっとおいしくないから。

 

これで口は閉じれなくなった。

 

さ、鎖をくわえたまま、情けない声、聞かせてごらん？

 

声を出しやすくするために、そうだな……。

 

首とか耳、弱いんだっけ。

 

こうやって……撫でられるのもだめ？

 

竦み上がって、わかりやすいな。

 

じゃあこれなら、どう？　

 

んん……っ、はぁっ

 

ふふっ、そうそう。そういう反応がほしかったんだよ。